2016年10月10日月曜日

長谷川彰良さんインタビュー



 服の作り手としての顔だけではなく、ビンテージに対する造詣が深く、様々な服作りに関するセミナーなども企画したりしている長谷川さん。現在はご自身の個展を3都市にて開催中。
長谷川さんの服に対する思いを聞きました。

★この世界に入ったきっかけ

K;作り手になろうと思ったきっかけは何ですか?

H:学生時代に垣田先生というフランスで修業した先生からスーツの作りを教わりました。それまでは既製服の作り方しか教わっていなかったんですけど、スーツの仕立てというものを知って、こんなに手間をかけて作る服があるんだという感動をしたときに、その時に偶然古着屋で見つけた1900年のフランスの消防服を何となく買ってみたんです。それを夜中に分解していたら涙が止まらなくなって…。100年以上前の消防服、言ってみたら作業服なのに垣田先生から教わったスーツの仕立て方と全く同じ作り方がされていて。こんな作業服があんな手間かかっているスーツの作り方で作られているんだ…ということにすごい感動しまして。僕が古着を通して味わうことが出来た感動をさらに100年後、150年後とかに自分が繋げたいと、バトンを渡したいという思いが自分の原点です。

K:そうなんですね。

H:そのために。100年後とかに学生が僕の服を分解して涙を流してくれたら幸せだと思って、作り手になろうと思いました。

K:洋服の学校に入るきっかけはあったんですか?

H:それは単純に服が好きで、小学校34年のときに初めてバッグを作ってみたんですよ。母親のミシンで。それからバッグだけではなくズボンを作ったり。小学校在学中に服作りを生業にするんだろうなと何となく思っていました。まぁ親がそういう仕事をしていたとかでは全然ないんですけど、偶然家にミシンがあって。偶然触って。なんだか面白いな…というのが一番のきっかけですかね。

★ビンテージに対する思い

K:長谷川さんはビンテージに対する造詣がとても深いですが、ビンテージのものを見てみようというきっかけはあったんですか?

H:もともと古着は好きだったんですけど、一世紀以上前の服とかは全然興味がなくて。でもなんかホントにスーツの作り方というものを知ったときに洋服の見方が少し変わったんですね。こういう拘った服を少し感じ取れるような雰囲気になってきまして。そんな時に偶然目に留まったというか、感覚的に気になりまして。1世紀、100年前とかの服を買ってみてほどいて感動してという。そこからのめりこんでいきましたね。

K:そうなんですね

H:ほんと、1860年から第一次世界大戦前までの服、ラウンジスーツ誕生、スーツの元祖みたいに言われるような服に興味がわいて、その辺を中心に買いあさるようになりました。

K:なにか文献を参考にしていろんなものを買っておられるのでしょうか?

H:勿論古いテーラーの本とかも一緒に読んでみたりしながら、テーラーの本に書いてあるパターンと古着は一緒なのかと検証してみたいと思って買ったりしています。実際に古い服を買ってバラしてみて、本当に古い製図の本と一緒だと感動しましたね。

K:そうなんですね。

★自分の服作り

K:長谷川さんご自身の服作りに関してはどうでしょうか?

H:最初は自分の服をまず古着を真似してみるというところから始めて何着か作ってみて…。次にそれとは別でいろんなテーラーの先生の所に通っていたのですが、その時に洋服の着心地とは何だろうということを教わりました。
まぁ古着の好きなところはあったんですけど、どうしても着心地が良くなかったりとかいうところがあったので。いろんなテーラーの先生から教わった技術と古い服をミックスしてもの作りをしてみたりとかというのを学生のときから社会人になっても土日はそういう時間にあててました。

K:そうでしたか。

H;そうですね…。でも自分の中では垣田先生が原点みたいになっていまして。一番最初にテーラリングを教わったのは垣田先生で。フレンチテーラードというものを教わって。その後社会人になってからは、その他いろんなテーラーの先生方の勉強会に参加させてもらいました。
でもやっぱり去年ぐらいから垣田先生の塾に入りなおして、また垣田先生のもとで勉強させてもらっています。

★現在の活動

K:現在長谷川さんは作り手としてどういった活動をされているんでしょうか?

H:僕は一番よく言われるのがビンテージマニアみたいな側面が強いんですけど、結構いろんな仕事をやっています。パタンナー業だったりデザイナー業だったり。あとは企画とか生産を手伝っているブランドもあれば、セミナーをコーディネートしたり(※インタビュー時、パンツ職人である尾作隼人さんのパンツセミナーが開催されていた)とか。あとはブロガーの顔だったり。まぁいろいろやってるねーみたいなことは言われるんですけど、全部僕のコンセプトである「100年前の感動を100年後に繋げる」ということにつながることは全てやろうと思っています。

K;そこはぶれていないんですね。

H:そうですね。ですから服作り以外のことも積極的にチャレンジしていって、まさに今年はその集大成的なものを個展という形で。各都市巡回展で京都、名古屋、東京で10月からやっていきます。
僕が持っているビンテージの服って洋服という概念を飛び越していて、100年以上残るものって人によって見え方が違って。僕は教科書だとおもって分解したり。でも他の人は絵画のように壁に飾ったり。あとは骨董品のように使う人がいたり。人によってその服がどのように見えるのだろうというのに興味があって。関心がわいていて。それを伝えたいと思って。洋服自体というよりは、様々な人の目にどう映るのかということに興味があって個展を開催しようと思っています。それも次につなげる価値観が生まれると思っていますので。ただ古い服っていいよね、すごいよねとしてではなく。いろんな可能性を秘めている服をいろんな人の色を載せて発表したいなーと思っています。

K:そうでしたか。インタビューする前は完全な作り手側の人だと思っていたのですが、本当にいろいろなことをされているのを聞いて、少し長谷川さんに対する見方が変わってきました。

H:もともとは作り手一本で作る側の人間でいたいと思っていたのですが、ブログとかを10年ぐらい書き溜めている中で、ブログ経由で人前でセミナーをやってみないかとか仕事をいただけるようになったので。100年前の感動を残すというのが「作る」ということ以外にもいろんな手段があるんだなということに気づかされました。今は作り手に固執するつもりは全くなく、様々な形で発信することに力を入れ始めています。

★今後の展望

K:今後一番やってみたいこととは何でしょうか?

H:これを言うと人によっていろんな反応をされるのですが、今一番面白いと思っているのが「K」というオーダーシャツをいうブランドさんとの仕事で。それはまさにファッションとテクノロジーとの融合。Kで目指しているのが、既製服というものが今後なくなり、一人一人が今後スマートフォンに自分の型紙をもって服を作る時代になると思っていて。そのためにいろんな最先端技術を使って。今はシャツから始めているんですけど、オーダーのシステムがいろんなものを用意していて。現在実装しているものだと、身長、体重、年齢入れたら自分の型紙が完成するシステムだったり。今後は本当にスマートフォンで自分の写真を正面と横2枚とってもらったら型紙が完成するという最先端技術を使ったファッションの提供に力を入れています。
結局古い服ばかりをやっていても意味がないというか、新しい服作りのやり方も同時にやっていないと、100年後に残すのは無理だと思っているので。僕の感動した古い服の魂を。やっぱりそこは全然固執しないで違う土俵に足を延ばして。でもそれがちゃんとつながることだと思っているので。今はテクノロジーを使ったファッションに力を入れています。

K:そうなんですね。正直僕も長谷川さんがこれに携わっていると知ったときは長谷川さんらしくないなぁ~と感じてしまっていました。

H:そう思いますよね(笑)。でも僕の中では違和感なくイコールでつながっていて。僕が残したい100年前の感動は古い服だけを勉強しても残るとは思っていないので。オールハンドメイドの服を残すために最先端技術を理解していないといけないと思っています。
ファッション業界は閉鎖的というか、刺激を受けることが少なくて。僕は将来、旬のものをお客さんの目の前でだす寿司屋さんみたいな洋服屋さんをやりたいんですよ。そういうスタイルでやりたいと思ったのも飲食業界の鮮度命な早いスタイルに感じるものがあって。
僕はいい服作れる人なんてごまんといるので、それをどうやって伝えたり見せたりするのかというところに着目していて。そういった目線で行くと、自分が残したい古き感動は古い服だけを学んでいたとしても残らない。だからもっと面白いものと組み合わせて残していく。そういうときにKのシャツの仕事は将来につながることだなぁ~と思ったんですよ。スマホに型紙があって気軽にオーダーできて、30日後には自分の手元に届くっていう服作りがあるからこそオールフルハンドメイドの服が残ると感じているんですよ。

K:そういった新しいもの作りが古くからのハンドメイドの服を引き立たせているという理解であっていますか?

H:そうですね。超シンプルな服と手作業の服と両極端になっていくと思っているので、なので僕は将来既製服は消えるのではと思っています。

★仕事にかかわるうえでの喜び、楽しみ。

H:楽しみはやっぱり共感や感動を共有できる人に会えることですかね。やっぱりずっと作り手側だと自分との戦いになることが多いんですけど、今は作り手からもう少し広い世界にかかわっていきたいと思っていまして。最近は全く異業種の方との仕事が増えていて。たとえばライターや代理店のかたとか。違う分野ですけど根っこの部分で共感してもらえたりすると嬉しいですね。思いを共有できる人に会えるというのは。
勿論僕の作ったものを買ってもらえるという共感も嬉しいんですけど、今僕の一番エネルギーになっているのはそういう全く違う分野の人と何ができるかわからないわくわく感をもってモノづくりをするっていう行為が一番エネルギーになっていますね。

K:ありがとうございます!…最後に長谷川さんの肩書きってどういう風に説明したらいいですかね()

H:肩書僕も悩んでいて。それは僕も聞きたいぐらいです()

2016年9月23日金曜日

寺島さんインタビュー記事

靴磨き職人を目指して路上で靴磨きをしている大学生、寺島さんをインタビュー

ケンスケ(以下K):今は学生なんですよね?

寺島さん(以下T):はい、あと一年半ぐらいありますね。

K:現段階の活動についてお聞きしていきたいと思うんですけど、今はどういった感じのことをされているのでしょうか?

T:今は夏休みの期間なので(取材時8月) 、「the way things go」さんという靴磨きのお店(大阪)で、週の大半をお世話になって、あと中心としては路上での靴磨きを平日は京都の四条烏丸、土日は京阪の祇園市場のほうで路上で靴磨きをしています。それ以外は時には出張でお世話になったりや、お店のイベントで呼んでいただいてそこで活動したりしています。

K:現在のされている活動ではどういったサービスを展開されているんでしょうか?

T:基本的には個人では路上で靴磨き。あとはお預かりしてというのも可能でして、今は靴をメインにお預かりしていまして、あとはお預かりする場合は革小物や鞄なども預からせていただいて磨いたりしています。以前に面白かったのは大きい革製のカンガルーの人形を依頼されたことがありました(笑)。革製品の洗いもさせてもらっています。

K:笑)。あっ洗いもされているんですね。

T:はい。あと簡単な傷補修もさせてもらっています。

K:磨き以外にもいろいろされているんですね。

T:そうですね。

K:磨きについてですが、お客様の要望に合った磨きを提案するような形なんでしょうか?

T::はい、言っていただければ、出来る範囲で要望にお応えしていきたいと思っています。靴の表面を光る、光らせないというのは個人の好き嫌いが出るところなので。あとは磨く前にどういったシーンで使われますか?と聞いたりして磨き始めたりします。

K:どういった靴が難しかったりしますか?

T:やっぱり白系の靴が難しかったりしますね。白といっても真っ白からクリーム系の白までいろいろありまして。結構難しいなぁ~と思っています。

K:そうなんですね。今はスタートされてどれくらい経つんでしょうか?

T:本格的に路上でし始めたのはまだ今年に入ってからで、その前は自宅でお預かりしたりとかお家に出張に行かせてもらったりしていました。

K:自宅でお預かりなどされていたのはどれくらい前なんでしょうか?

T:それは1年半ぐらい前ですね。それまでは個人で自分や親戚のものだったりを磨かせてもらっていました。

K;そうなんですね。路上で始められて、大変だったりすることはあったりしましたか?

T:始めたときは冬ということもあったんですけど、知名度も全然ない中で路上でやっていても、例えば音楽をやったりしている人もいる中で京都で路上で靴磨きをしている人は全然いなくて。文化がない中で信頼性もなく全然誰もとまってくれなかったり、馬鹿にされたりすることもありました。

K:そうだったんですね。そんな中でも続けるうえでのモチベーションをどういった感じで保っていたのでしょうか?

T:そうですね、靴磨きをさせていただくと喜んでいただけるというのがやり続けるうえでのモチベーションになってきました。中には馬鹿にする人もいる中で、応援してくれる人もいましたのでそれは励みになりました。応援してくれる人の中には家族もいまして。それは結構励みになりました。

K;家族の応援はうれしいですね

T:そうですね。

K:最近、靴磨きをしていてうれしかったこととかはありましたか?

T:路上でやっていてお客様が、最近家の中を綺麗にするようになったわ~と言われるお客様がいまして、そのお客様がなんでかなぁ~と考えたときに寺島さんに靴磨いてもらうようになったのがきっかけで、小さい気遣いをするようになって自分の心も変わるしお店の雰囲気も変わったりした言ってくださいまして。靴磨きがきっかけになって少しでも生活やその方の気持ちが変わったという経験を聞けたのはうれしかったですね。

K:自分発信でその人の何かが変わったというのはうれしいですよね。

T:リピートしてくれる人がいるんですが、そういった方が先ほどのようなことを言ってくれることがありまして。それはうれしかったりしますね。

K:定期的に着てくれる人もいらっしゃるんですね。

T:はい、 最近は少しずつですが増えてきました。

K:実際に靴磨きを始めるきっかけとなったことはあったんですか?

T:僕は小学生の時に野球を始めて、その時に両親に道具を買ってもらって。野球の道具は一式そろえるとかなり高額になるんですが、その金額は小学生の僕にとってはものすごい大金と自分でもわかっていたので、絶対大切に使い続けようと思いました。そこから一つのものを大切に手入れをして使っていこうと思いまして。それを習慣づけてやっていまして。大学に入って野球はやめたんですけど、手入れの習慣は自分の中に身についていましたのでそこからずっと靴磨きを自己満足でやるようになりました。靴磨きを始めて、磨いた次の日に玄関で綺麗になった靴を見ると、「今日も頑張ろう」という感じが毎回していたので、それをいろんな方に味わってもらえたらという思いが強くなりました。
関西はまだ靴磨きをされている方は全然いないので、僕が靴磨きを発信できたらと思い始めました。

K:そうだったんですね。いろいろ手入れをするものがある中でなぜ靴にたどり着いたんですか?

T:そうですね。野球をやめてからファッションに関することも好きになったんですけど、ファッションにおいて僕は足元が土台にあると思っていますのでそこをメンテナンスしたいと思うようになりました。また、革製品はエイジングが楽しめるので、メンテナンスしていて使い続けていこうと思うようになりました。

K:磨きの技術に関しては独学なんですか?

T:当初は独学でやっていまして。今はお世話になっている靴磨きのお店で技術を学んでいます。

K:始めるにあたって影響を受けた人はいますか?

T:中学高校のときにブリフトアッシュの長谷川さん(靴磨きで有名な方)がテレビに出られていまして。その時は靴磨きをしようと思っていなかったのですごい人がいるんだなぁ~と単純に思っていまして。実際大学に入って本格的に靴磨きを始めたときに、大阪でお世話になっている 「the way things go」のオーナーさんに影響を受けました。それは靴磨きだけではなく人間としても尊敬しているので。

K:そうなんですね。では今後将来的に展開していきたいなぁ~と思っていることはあるんですか?

T:もちろん今は学生なので学業をしっかり終わらせて。今は 「the way things go」にお世話になっていまして。オーナーはとても尊敬しているので、磨き以外の面も含めていろいろ勉強していきたいなぁ~という気持ちが強いです。磨きの面に関してはスピードや技術に関してまだ納得していない面も多いので、目の前のことを一つづつしっかりしていきたいなぁ~と思っています。その中で、今後の目標を据えていきたいと思っています。

K:ありがとうございました。応援しています。